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民泊

「4000万人時代」の光と影──訪日客数は過去最高でも、ホテル・民泊業者が楽観できない理由

「4000万人時代」の光と影──訪日客数は過去最高でも、ホテル・民泊業者が楽観できない理由

2025年5月、日本政府観光局(JNTO)は訪日外国人旅行者数が369万3300人に達したと発表しました。前年同月比で21.5%増という大幅な伸びであり、5月としては過去最多。年初からの累計でも1814万人を超え、年間4,000万人という大台も射程圏内です。

しかし、この“記録更新”の数字の裏側では、私たち宿泊・民泊業者が見逃せない兆候がいくつも現れています。


🌏 訪日客全体は増えている──でも全エリアが潤っているわけではない

訪日客の増加は主に**韓国(82.6万人、+11.8%)中国(79万人、+44.8%)**が牽引。中国路線の増便や韓国地方空港との新規就航が奏功した形です。特に東アジアの短距離旅行が活発化し、東京・大阪・福岡といった主要都市のホテルは好調な稼働を維持しています。

一方、香港市場だけは唯一の前年比マイナス(▲11.2%)。SNSを中心に広がった「7月5日に地震が起こる」といったデマ・予言が、訪日旅行控えを誘発。関空〜香港線は1割が運休仙台空港では香港便の減便・運休が10月まで継続する見通しです。

つまり、“全体の数”に安心するのは危険であり、地域別・路線別の詳細な分析と柔軟な対応が不可欠な局面に突入しています。


💸 価格の“割安感”はすでにピークアウト?

さらに重要な視点が、「訪日旅行=お得」という感覚の揺らぎです。現在、円相場は1ドル=144円前後と円高に転じつつあり、百貨店の免税品売上も減少傾向。また、東京・大阪・京都などのホテル価格の高騰や空室不足により、訪日リピーターの一部は**“割高感”に不満を持ち始めています**。

みずほリサーチの坂中氏も指摘する通り、円安頼みの集客モデルには限界があるのです。


🧭 地方誘客と体験価値の再設計が“次の一手”

今後のインバウンド戦略の要は、地方への誘客と旅行体験の質の向上にシフトしていくべきでしょう。

  • 多言語対応の整備

  • 地域限定アクティビティとの連携

  • リピーター向けに価格と体験を最適化した民泊運営

これらは「人数」ではなく「満足度」と「客単価」を追求する方向への転換です。


✅ TOCORO.の取り組み

TOCORO.では、現在のような変化の兆しをいち早く察知し、外国人旅行者の予約動向、為替、航空路線の変化を元に価格とキャンセルポリシーを柔軟に調整。さらに、地方ならではの高品質な体験と情報提供を行うことで、平均以上の稼働率とレビュー評価を維持しています。


✍️ まとめ:「増えた」はチャンス、「偏り」はリスク

  • 訪日外国人数は伸びているが、**“国・地域別の偏り”と“高価格化による割高感”**が今後のリスク

  • 地方民泊・宿泊施設にとっては、今こそ**“来てもらえる理由”の再設計が重要**

  • 数の時代から、“質”と“持続可能性”の時代へ

民泊や宿泊業を担う私たちにとって、いまは「数字の多さに安心する」のではなく、「旅行者の期待値の変化にどう応えるか」を自問するタイミングです。


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