column( コラム )
日本人観光客はどこへ?──インバウンド拡大と国内旅行離れの実態と今後のヒント

2025年ゴールデンウィークにかけて浮き彫りになったのは、日本人の国内旅行離れです。インバウンド(訪日外国人観光客)が過去最高水準に達する中、特に京都のような人気観光地では「混雑」「価格高騰」などを理由に、日本人観光客の足が遠のいています。本コラムではその背景を整理し、今後の観光戦略や民泊運営に役立つ示唆を探ります。
① 日本人の「京都離れ」が示す兆候
京都では、2024年秋以降、日本人の宿泊数が前年を大きく下回る状況が続いています。2025年3月時点で日本人の延べ宿泊数は16.1%減となり、金閣寺・哲学の道・伏見稲荷など主要観光地では、外国人は増加、日本人は減少という構図が明確に表れました。
理由は主に次の通りです:
- 宿泊料の高騰(コロナ前比で約4割上昇)
- 予約の取りづらさ(インバウンドが優先的に予約)
- 混雑やオーバーツーリズムに対する嫌悪感
これらが相まって、特に中高年層や家族連れの国内旅行意欲にブレーキをかけています。
② 全国的な傾向と海外旅行への転換
この傾向は京都に限ったものではありません。観光庁の発表によると、2025年3月の日本人宿泊者数は11カ月連続で減少。JTBのGW期間の予測でも、国内旅行者数は前年比7.2%減となり、一方で海外旅行者数は前年比10%増と明暗が分かれました。
北海道でも道内観光客数が前年同期比4%減、19年比で16%減と、地方にも影響が波及しています。反動減や物価高が響き、特に道民による宿泊需要の落ち込みが深刻です。
③ 「穴場」エリアに注目が集まる
混雑を避けたいというニーズの中で、比較的静かで価格も抑えられるエリアに注目が集まっています。
代表例:
- 湯河原(神奈川県):箱根に比べて人が少なく、価格も手ごろ
- 京北・山科・西京(京都市郊外):中心地から離れて日本人客が増加
また、ラーメンやパンなどの新しいグルメスポットがある町は、若者やファミリー層にも人気を集めており、静けさ+新しい体験を求める層が地方へ流れている兆しがあります。
④ 民泊・宿泊施設運営への示唆
今回の状況は、宿泊業界に以下のようなヒントを与えてくれます:
- インバウンド中心の施設は価格戦略と品質維持が重要(レビュー対策含む)
- 国内客に向けては“静かで安心できる滞在”や“お得感”を打ち出すマーケティングが効果的
- 価格の柔軟な設定(平日割、早割、ローカル向けプラン)
- 予約のしやすさや分散型の宿泊提案も鍵
また、湯河原のように“地域ブランド”を強化する動きにも注目すべきです。今後の宿泊事業は、**一極集中ではなく「分散と深化」**が求められるフェーズに入っているといえるでしょう。
まとめ:訪日客と共存する観光モデルへ
訪日外国人客の増加は今後も続く見通しであり、政府も2030年には6000万人達成を目標に掲げています。その一方で、日本人が国内観光から離れていく動きを放置しておくと、観光地全体のバランスを崩すリスクがあります。
これからの観光政策や施設運営には、**外国人観光客と日本人観光客の“共存戦略”**が不可欠です。
地方の“静かな魅力”や“分散型滞在”をPRし、オーバーツーリズムに依存しない観光地経営が求められる時代。民泊運営もその一翼を担う形で、地域との共創に貢献していくべきでしょう。
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